2018年04月03日

即興小説『ピンキーリング』

せっかく小説ブログランキングに参加しているのに、

ブログでの小説関連の記事は、サイトの更新情報ばかり、

というのも味気ないので。

久しぶりに、こちらで即興小説でも書いてみます。


『ピンキーリング』

高校の後輩が、俺と同じ大学に入学してきた。
ただの後輩ではない。文化系の部活動でお互いに一目惚れし、「付き合う」というお互いの合意もしないまま、自然と手を繋いで、キスもしていた間柄だ。それらの行為に名前を敢えてつけるのなら、「お付き合い」とでもいうのだろう。
お互いの両親には、この関係を黙っていた。まだ、その時ではないと思っているからだ。
奇しくも、大学の授業が始まる日は、俺の誕生日だった。俺から誘って、授業が終わった後に、恋愛映画を二人で見に行った。エンドロールが流れて始めた時、いつもはなかなか素直になれない彼女が、横からぎゅっと抱きしめてきたのが、たまらなく愛おしい。
「また、あなたと日々を過ごせるかと思うと、幸せが溢れてきて、それをどうあなたに伝えたらいいか、わからなくて、その……」
席は一番後ろ。明るくなってから、真っ赤な顔でしどろもどろに話す彼女を、俺も抱き返した。

映画館の入るビルにあるファミレスで、夕食をとる。俺はペペロンチーノ、彼女はカルボナーラ。
デザートが食べたい、という彼女のリクエストに応えて、二人でティラ・ミ・スをつついていると、彼女が「渡したいものがある」と言って紺色のリュックサックを開けた。
「あなたは、指輪だなんて柄じゃ、ないかも、しれませんけど」
『For You』と書かれた、小さな茶色い封筒。今開けてほしいと言われて、破らないように慎重に開けると、青い円形のものが出てきた。指輪、と言われたら、そうなのだろう。シンプルなデザインだが、透明感があって、なかなかに綺麗なものだ。
「それ、実はペアリングなんです」
「ええ、そうなんだ」
彼女は左手を僕に差し出してきた。そうだ、今日の授業の後、会った時からずっと気になっていたのだ。小指にはまっていた、やはり透明感のある、ピンク色の指輪。
「小指につけるんだ」
「ピンキーリング、っていうんです。あなたと対になるような何かが欲しくて、でもTシャツとかだと、あからさまで恥ずかしくて、どちらかといえば、さりげないものがいいかな、と思って……」
なるほど、俺とそういう仲だ、という証が欲しい、と。ああもう、どうしてこんなに可愛いんだ。
俺も、左手の小指にそれをはめてみる。ちょうどいいサイズだった。あれ、しかし。
「ねえ、何で俺のリングサイズなんて知ってるの」
「まだ私達が二人とも高校生だった時、私、あなたの家に行きましたよね」
「時々来てたよな」
「あなたが昼寝している間に、こっそりと測ったんです。驚かせたくて……」
うつむきながら、長い前髪で目元は隠れて。しかし、また赤みがさしてくる頬を隠しきれていない。
「似合ってますよ。それと、お誕生日、おめでとうございます」
そう言って、俺の左手首を持って引き寄せて、指輪の上に唇を落とすものだから。
自分の頬も熱いと自覚するまで、そう時間はかからなかった。

(終わり)


にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村
posted by 稲城(イナギ) at 22:22| Comment(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月08日

SS『七夕』(鉄道擬人化)


※注意

・実在の路線の擬人化

・現実のあらゆるものと無関係

大丈夫な方のみ、続きからどうぞ。


↓1日1クリック、応援よろしくお願いします。

続きを読む…
posted by 稲城(イナギ) at 18:27| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月18日

『祈願』


※詩かSSか微妙

※ちょっと怖いかも



僕の視線の先

頰を紅く染めて

何かを手渡す女

対する相手は

後ろ姿でも

誰だか分かる

ーー僕の恋人

男は一礼すると

何かを仕舞い

女に背を向ける


何しよったん。

「貸したハンカチ、返してもろうた」

貸した?

「駅のホームで泣きよったけん」

別れ話か。

「婚約破棄って言いよった。

他にいい人見つけたって」

そりゃまた。

「残酷やね、そういう人」

本当やね。

さっきは何か言いよった?

「特に何も? 恥ずかしそうには、しよったけど」


本当は全部

見てた、聞こえていた、

知っていた

真っ赤な顔、告白の言葉、

僕をいじめた人

ざまあみろ

不幸になれ、

不幸になあれ…



↓1日1クリック、応援よろしくお願いします。

posted by 稲城(イナギ) at 19:23| Comment(0) | TrackBack(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする