2015年10月08日

鉄道擬人化SS『甘口カレー』(後編)

最近話題がありません。
ブログの記事にするほどの。

それだけ平和なのかもしれませんが。

……自分の周り、は。


この間の続きです。







甘口カレー(後編)


「お、八王子か。ここにも来るんだ」
「来るよー。ここのカレー結構好きでね。高幡がいる時は聖蹟まで行くけど」
「君、本当に高幡嫌いだね」
「しょうがないよ、性格合わないんだもん」
自然な流れで八王子が百草園の向かいに座ったので、俺も百草の隣に座る。
しかし、この駅で百草が1人でいるなんて珍しい。
「そういや、高幡は?」
「分倍と飲みに行ったよ」
「お前は行かなかったの」
「酔っぱらいの介抱をするのは面倒だからね」
「なるほどね」
分倍は外で飲む時は意識して抑えるが、高幡はつい飲み過ぎてしまう傾向がある。
家では逆になるのがまた不思議なところだ。
熱々のカレーが運ばれてくる。今日も美味しそうだ。
「相変わらずカレーまで甘口だねえ」
八王子がにやにやしながら聞いてくる。
「悪い? ていうか、ここの中辛結構辛いからね? 君達涼しい顔で食べてるけど!」
昔、試しに一口だけ、他の駅が食べていた中辛を食べたけど、それ以来甘口しかここでは食べていない。
「ええー、普通だと思うけど」
「僕もこれぐらいが丁度いいよ」
「辛いものダメで悪かったね」
マイルドなカレー。
それはカレーなの、って思わないことはないけど、でもお子様味覚の俺にとってはこれがいいし、これでいいのだ。
同じ甘党の他の2人はどうかって?
高幡はものによっては中辛も食べるけど、分倍は甘口しか食べない。
もちろん、分倍の作るカレーも甘口。
でも誰も突っ込まないよ、面倒だから。
夜8時半、男3人でカレー。
うん、悪くない。

posted by 稲城(イナギ) at 18:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 鉄道擬人化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月05日

鉄道擬人化SS『甘口カレー』(前半)

急に寒くなりましたね。

寒い日には熱いものやあったかいものが食べたくなりますね。







『甘口カレー』(前半)


京王八王子駅

そろそろ帰宅ラッシュも一段落し、自分も仕事を切り上げようとした午後8時。
駅員から声を掛けられたので出てみると、赤目銀髪の隣人ーー八王子がいた。
「夕ごはん食べに行かない?」
「いいよ。ちょっと待ってね」
あと少しだった書類を仕上げると、駅員達に後を任せて事務室を出た。
「何食べる? 俺はカレーが食べたい気分だけど」
「いいねえ。高幡のところにでも行くか?」
高幡不動駅の一階には、京王系列のカレー屋がある。
そこに一度八王子を連れていったら、それ以来すっかり気に入ったらしい。
まあ、入るのは高幡がいない時に限られるけど。
「そうするか」
京王線の特急に乗ってひとっ飛び。
高幡不動駅の駅員に挨拶したけど、本人は百草園と一緒にもう上がったという。
食べるメニューはもう決めていた。
甘口の野菜カレー。最近野菜不足かなと思っているからだ。
エスカレーターで一階に降りて、目的の店に向かう。
店の中を見たが、背が高くて目立つあの青髪はいないようだ。
店の外のメニューを八王子がじっと見る。
「何食べようかなー。京八はもう決めたの?」
「俺はもう決めてるよ。あ、そうだ、今日は奢ってあげようかな」
食事と甘い物以外にはあまりお金を使わない。財布に余裕はある。
「お、京八太っ腹。じゃあオムカレーにしようかな。いい?」
「いいよ」
カレーの中に鎮座するオムレツ。これが意外といけるのだ。
中に入って注文する。
甘口の野菜カレーと、中辛のオムカレー。
奥の席に座ろうとそこへ行くと、黄緑の髪が目に入った。
百草園が一人で食べていた。
「あれ、百草じゃん」
posted by 稲城(イナギ) at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 鉄道擬人化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月29日

SS『お月見』(鉄道擬人化)

※玉南オールキャラ+α





午後6時

高幡:今から全員、僕の駅の改札前に集合
高幡:まんじゅうを1人1個サービスするよ

平山城址公園駅

「……何だ、こんな時間に」
帰宅ラッシュの時間帯。
私の駅はともかく、急行以上の種別が止まる主要駅は、この時間帯に席を外すことはないはずだ。
「どうしたのですか?」
小さな声で言ったつもりだが、駅長の耳に入ったらしい。
「高幡が呼び出してきた」
「ああ、それなら行ってもいいですよ」
「事情を知っているのか?」
「昼間訪ねて来ましたよ、『天気が良かったら皆でお月見に出掛けようと思ってるけど、いいかな』と」
知らない間に手を回していたらしい。高幡らしいやり方だ。
「それで、いいと言ったのか?」
「ええ。それに、私達なら大丈夫ですよ。安心して行って来てください。今日はスーパームーンですから、皆で楽しんで来てください」
「そうか……では、たまにはお言葉に甘えようか」
各駅停車に乗ると、同じ車両に長沼が乗っていて、次の南平駅でも本人が隣に座った。
「高幡もたまには気がきくね」
たまには、を強調したのは長沼。
高幡が自分からこんなことを言い出すことはめったにない。
「まあ、職権乱用なところもあるかもしれないがな」
高幡不動駅には検車区があり、この辺りの中心駅でもある。
発言力はあるだろう。
「でもいいと思うよ、今日は月がすごく綺麗だから」
「そうかもしれないな」

駅に着くと、府中と分倍河原、それに聖蹟桜ヶ丘はもう来ていた。
高幡は袋を持っている。まんじゅうと言っていたから、間違いなく高幡まんじゅうだろう。
「来てくれてありがとうね」
「いいや、こちらも誘ってくれて嬉しい」
「ありがとう、高幡!」
次に新宿方面からの各駅停車が、その次に京王八王子方面からの特急がそれぞれ着いて、全員が揃った。

行く場所はもちろん、高幡不動尊だ。
「ねえ高幡、月はどこ?」
キョロキョロしながら、府中が尋ねる。
「僕達の後ろ側だよ。今は建物で見えないけど、着いたら見えるよ」
「高幡、お腹空いたー」
「中河原、後であげるから」
横断歩道を渡って、左側の門から夜の不動尊に入る。ライトアップされた五重塔が綺麗だ。
月や五重塔を写真に収めようとする人がちらほらといる。
三脚を構えたり、携帯電話で撮ったり。
人間達も楽しんでいるようだ。
「この階段を登るよ。足元気を付けて」
五重塔へと続く階段を上がって、右に曲がってまた少しだけまっすぐ進むと、角で高幡が立ち止まった。
「どうしたの?」
百草園が聞く。
「この場所だよ。皆、後ろを向いて」
言われた通りに、来た方向を振り返れば。

そこには、煌々と輝く丸い月と、その横に堂々と佇む五重塔の姿があった。

「わあ、すごい……」
「こんな近くに、こんな素敵なところが……」
聖蹟と北野がそう言った以外は、皆見入ってしまって言葉を発さない。
私も、容易にこの景色を言葉で表現することは出来なかった。
たっぷりと1、2分経ったところで、高幡の声がした。
「写真を撮りたい人は撮っていいよ。あと、まんじゅう食べたい人は僕のところにおいで。あまり騒がないでね、人間もいるから」
皆が動いた。
分倍河原と京王八王子、それに中河原は真っ先に高幡のところへ行き、北野は良さそうなカメラを構えた。
他の駅も、携帯電話でいい一枚を狙い始めた。
私も携帯電話を持っていた。良さそうな角度がないか、色々試していると、背中をトントンと叩かれた。
「何だ?」
百草園だった。
「しゃがんでみたら? 角度ついて上まで入るよ」
「なるほど」
その通りにすれば、確かに五重塔の上の方と月が同じ画面に収まった。

その時、思いがけない声が聞こえた。
「あれ、皆来てるんだ」
「……相模原!」
分倍の声だ。その方向に目をやると、確かに相模原線がいた。
本線と玉南もいる。
「玉南はともかく、本線とみーちゃんは大丈夫なの? 仕事」
高幡が聞く。そりゃそうだ、ピークは過ぎたが、まだ下り列車は乗客が多い時間だ。
「大丈夫だ。ここだと駅も近いしな」
本当は他の路線ーー井の頭線や高尾線、それに競馬場線も誘ったのだが、それぞれ先約があったという。
「ということだ。という訳で高幡、まんじゅう一つくれないかな」
「いいよ」
おや、今日は妙に気前がいい。いつもは色々と紐が固いのだが。
私も一つもらう。
「昼間、声をかけに行ったと聞いたが」
彼の横に腰を下ろす。
玉南は他の駅と食べながら話していて、本線と相模原は早速写真撮影を始めている。
「そうだよ。昨日、まんじゅうをたくさんもらってね。月がこんな感じになると聞いてたから、この機会にお月見をしようと思いついたんだ」
「皆でか?」
「だって、僕達は11+1で1でしょ?」
11+1。
11は玉南区域の駅の数。1は玉南本人。
それはつまり。
「玉南も誘ったのか」
「もちろんだよ。他の路線も呼んでいいと言ってね」
その結果が、この状態という訳か。
「でも皆呼んで良かったよ。1人で見る月は寂しいけど、皆で月を見ると楽しいからね」
「そうだな」
静かではないが、騒がし過ぎることもない。
今日も平和だ。


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posted by 稲城(イナギ) at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 鉄道擬人化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする